つい先日、発表された日本アカデミー賞では『劒岳 点の記』での演技が認められ、最優秀助演男優賞を受賞した香川照之。そういえば最近、映画関連の賞でよく名前を見かけるなあと思っている人も多いのでは? いまや中堅の実力派、日本映画やテレビドラマに欠かせない俳優に成長した彼だが、若いころは東大卒のお坊ちゃん俳優というイメージが強かった。
父 は歌舞伎役者の三代目市川猿之助。母は宝塚歌劇団の元雪組トップ娘役で女優・浜木綿子。親戚縁者には、祖父に三代目市川段四郎 、祖母に高杉早苗、叔父に 四代目市川段四郎、従弟に二代目市川亀治郎など、そうそうたるメンバーが並ぶ。 両親ともに舞台人であったが、本人には俳優になるつもりはなかった。だが、東京大学文学部第4類社会心理学専修に進学したのち、親が俳優だったことやほか にやりたいこともなかったため、消去法で俳優になったという。
大学卒業後、NHK大河ドラマ『春日局』でデビューし、小早川秀秋を演じ た。仕事には恵まれていたが、「なんとなく俳優をやっていて、なんとなく現場から帰ってきて、自分の親とかを見て」落ち込んだりする毎日。達成感もないの に仕事が終われば、自分のなかでは煮え切らないことが増えていく。そんなとき、『静かなるドン』(2000年)で鹿島勤監督に出会う。監督はテイク100 を平気でやらせたり、エキストラ100人を残して香川のカットを撮り続けたりしながら、理屈で仕事をすることの無意味さを教えてくれたという。「演技と は、演技をしないことだ」だと気づき、カチカチの固定観念から解放され彼は、その後著しく変貌する。
ベルリン国際映画祭でアルフレート・ バウワー賞受賞をした『独立少年合唱団』(2000年)、カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した中国映画『鬼が来た!』(2000年)などで、徐々に知名 度が高まる。さらに、NHK大河ドラマ『利家とまつ~加賀百万石物語~』で豊臣秀吉を演じると、一般にも広く知られるようになった。東京国際映画祭グラン プリと優秀男優賞を受けた『故郷の香り』(2003)、『ゆれる』(2006)では主演、助演を問わずさまざまな男優賞を受賞。2009年にはNHKスペ シャルドラマ『坂の上の雲』の正岡子規役を演じるため、食事制限やランニングなどをして約5か月で15キロ以上の減量に成功。すさまじい役者魂を見せた。 その香川照之が、今回の映画『あしたのジョー』で丹下段平を演じる。さぞかし見応え十分と、今から楽しみなのである。
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